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「広告ランク=品質スコア×上限CPC」は間違い!AdWordsの掲載順位に品質スコアは影響しない。

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今日は多くのウェブサイトで謳われているAdWords PPC広告の最適化方法の間違いを1つ指摘します。

Googleの検索結果の最上段に3つほど表示される広告は、検索時(厳密には検索キーワードが使用された時)に関連する広告の候補をどの順番で表示するかをオークションで決定します。

このしくみを理解し、適切なパラメータを振ることで一番上に表示させようという試みはSEMの基本中の基本として誰もが奮闘している部分でもあります。

ですがPPC(リスティング広告)の一番の障害はややこしさにあります。単純に掛け算できないという意味でもありますが、タイトルの通り品質スコアは掲載順位に影響を与えませんが、品質スコアの算定基準となっている「推定クリック率」などは広告ランクに大きく影響します。

この部分を理解するにはまずそれぞれの言葉の意味を正確に把握する必要があるでしょう。

広告ランク=現在の指標。品質スコア=過去の指標。

GoogleAdWordsの品質スコアとは
品質スコアは、広告オークションにおける競争力の総合的な推定値となるため、オークション時の広告ランクの算出には使用されません
品質スコアとは – AdWords ヘルプ

ヘルプにはしっかりと書いてあるのですが、その上に「品質スコアが高くなるほど、入札単価を低くおさえつつ、広告掲載順位を上げることができます。」とも書かれているため、誤解が生まれたんじゃないかと思います。
この言葉の真意は「高い成果を目指しながらコストを抑えられる」ことと思われます。つまりコスト面に対するアドバイスであって、「順位を上げられる」ことではありません。

というわけでまずはそれぞれの言葉の意味から。

広告ランクとは、広告の掲載順位を決めるオークションが開催された時、候補の広告それぞれの”強さ”を表す指標です。このため順位に大きな影響を与えます。

対して品質スコアとは、簡単にいえば過去の掲載結果の統計や平均から算出された”成績”であり、広告ランクとは見ているものが違います。

品質スコアは、対象のキーワードに対し自分の広告がどの程度有利に入札できるかの指標にはなっても、実際に入札する時には参照されません。

「間違い」である最大の要因→少なくとも掛け算は使わない。

よくある勘違いというか僕自身少し前までそう思っていたのですが、たとえば以下のような考え方は完全に的外れとなります。

マチガイ→上限CPC100円、品質スコア9/10の場合、「100×9」で900円までオークションに参加できる。←マチガイ

実際に広告を出してみるとわかりますが、オークションの結果が反映される「平均クリック単価」は「上限CPC×品質スコア」の計算結果とは遠くかけ離れた金額となることがほとんどです。

google_adwords_first_position_bid_estimate

キャンペーンの表示項目で確認できる「First Position Bidの見積もり」というのが、そのキーワードでオークションで1位を獲得するのに必要と思われる金額の参考値です。

当たり前ですがAdWordsの順位を決めるオークションはキーワードが使用されるたびに毎回行われます。マッチタイプによって関連性も変わりますし、広告表示オプションによって検索者の現在地が影響することもあり、オークション結果は毎回異なります。このためFirst Position Bidの見積もりも参考値にしかならず、これを超えるCPCを指定すれば必ず1位が取れるというものではありません。

さてここで疑問が1つ。今の画像の真ん中にこう書いてありますね。

広告ランクは広告の品質スコアと入札単価によって決まります。

あれ…?

と思ったかもしれませんが、まずはこの章の表題にあるように「掛け算ではない」ことに着目してください。

より大雑把に説明すると、広告ランクは数値ではありません。このため「上限CPC×品質スコア値」の結果がそのまま反映されるわけではもちろんありません。

詳細は公開されていないのでイメージの話になりますが、広告ランクはオークションに影響する広告が持つ”強さ”によって「Aランク」「Bランク」「Cランク」のようにわけられると考えていいようです。
ただし!「上限CPC×品質スコアの計算結果が一定金額を超えたらランクアップ」みたいなしくみはありません。

また先程書いた通り、広告ランクはオークションが行われるたびに毎回個別に算出されます。つまり絶対値ではありません。どれだけ評価や親和性が高くても、広告ランクが一定水準を維持する保証はありません。

つまり、同じ条件で検索を行ったとしても毎回順位が異なることになります。これについては実際に検索してみて、広告が出てきたらページ更新をかけてみるとわかりやすいかと思います。シークレットウィンドウを使うと特に顕著です。

なので、傾向というか「どのくらいの強さを持っているか」を測るバロメーターが必要になります。それが品質スコアです。

混同する理由:両者の算出基準となる要素が重複している!

ここが結構キモだと思います。

広告ランクの算出方法

広告ランクは入札単価と品質スコアのコンポーネント(推定クリック率、広告の関連性、ランディング ページの利便性)、広告表示オプションやその他の広告フォーマットの見込み効果に基づいて算出されます。
広告ランク – AdWords ヘルプ

ここで大事なのは、広告ランクに影響するのは「品質スコアのコンポーネント」であって「品質スコア値」ではないことです。

品質スコアの算出方法

品質スコアとは、広告やキーワード、ランディング ページの品質を表す指標のことを指します。

品質スコア(1 ~ 10 段階評価)と品質スコアを決定する各要素(推定クリック率や広告の関連性、ランディング ページの利便性)は、アカウントの [キーワード分析] で確認できます。
広告やランディング ページとユーザーの関連性が高いほど、品質スコアが高くなります。
品質スコアとは – AdWords ヘルプ

品質スコアを決める要素(コンポーネント)には次のようなものが含まれます。

  • 推定クリック率
  • キーワードと広告の関連性
  • 広告とランディングページの関連性
  • ランディングページの利便性

品質スコアを決めるこれらの要素(コンポーネント)は広告ランクに影響を与えます。このため「品質スコアが広告ランクに影響する」という表現がAdWordsヘルプの随所で見受けられるわけですが、これらの総合的な成績を示す品質スコア値(10段階評価された値)それ自体は広告ランクに影響を与えません。

ちょっとややこしいのですが、広告ランク(=掲載順位)に影響するのは「コンポーネント」であって「品質スコア値」ではないことだけはきちんと把握しておいてください。

そして同時に、「広告ランクの算出に要素同士の掛け算は使わない」ことも覚えておきましょう。様々な要素を参照しつつ独自のアルゴリズムで判定されますので、安易に推測することはできません。

まとめ

上記の話を簡単に纏めると次のようになります。

  • 広告ランクとは、上限CPC・推定クリック率・関連性・LPの利便性・広告表示オプションなどを参考に算出、ただし掛け算ではない
  • 品質スコアとは、推定クリック率・関連性・LPの利便性などを参考に算出、ただし掛け算ではない
  • 最終的に算出された広告ランクはリアルタイムの指標であり、掲載順位に影響する
  • 最終的に算出された品質スコア値は過去ベースの成果であり、掲載順位に影響しない

このため「品質スコアさえ高ければ上限CPCを抑えても1位が取れる」は間違いとなります。高い順位を獲得するにはやはりある程度の入札単価が必要になりますが、品質スコアが高い(=推定クリック率、関連性、LPの利便性が高い)と有利になるため、結果的に安いコストで高い順位を確保しやすくなる、というものです。

別の言い方をすると、品質スコアが高い場合に受ける恩恵は「入札額の上限が上がる」ことではなく、「入札額の下限で勝てる」ことです。「最低限これだけ入札しておけば勝てるだろう」という下限ギリギリで落札できる機会が増える、ようなものです。じゃその下限はいくらなのかということで、First Position Bidの見積もりを参考にするわけです。

こうやって入札額を見積もります。

先程も書いたようにそれぞれを評価する際の内訳け、コンポーネントが重複しているため、広告ランクと品質スコアは連動しているともいえます。しかし直接の影響は与えていません。

次回は「品質スコアにマッチタイプは影響しない。が…?」をお送りしたいな~と思っています。

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