ネット経由で集客しようと思った時、誰もが最初に行うのが検索エンジン最適化、SEOです。
ですがその理屈だけ理解してやり方を間違えるといつまでたっても成果が出ません。SEOで一番大切なのは「役に立つ」ことです。
では質問です。あなたが作ったページは「誰に」「どんな時に」役立ちますか?
目次
何をもって「有益」とみなすかという定義
たとえば「動物」で検索したとして、猫の画像が出た時と犬の画像が出た時はどちらが有益でしょうか?
自分は猫好きだから猫!と思うかもしれませんし、一般的に犬を飼っている家庭のほうが多いから犬!と統計情報を持ち出す人もいるかもしれません。
しかし、これほど意味のない考察も珍しいですよね。
答えは「人それぞれ」です。それ以外にはなりません。
しかしそれでは「動物」というキーワードでSEOを行うことができません。と思うじゃん?
そこでより具体的に、「動物」と検索する人の意図を想像します。この「検索意図を想像する」作業こそがSEOの醍醐味(一番楽しい部分)であると同時に奥義でもあると思います。
包括的なコンテンツはNG、必要なのはピンポイントな情報
猫か犬か迷ったら、1つのページに両方含めるのではなく「猫のページ」「犬のページ」をそれぞれ作ります。
しかしこの方法ではページそれぞれに対してのSEOとなり、サイト全体に対するものではなくなります。
ではどうするか?
多くの人はここで勘違いをしているように思います。
「そうだ!それならトップページに猫と犬を両方入れておこう!」
と。そうすればどちらが好きな人もそのページに来てくれるだろうと。
気持ちはわかりますが、SEOについて調べた時、キーワードに関する情報と一緒にこんなことは書いてありませんでしたか?
原則として1つのページに記載する情報は1つのテーマに絞ること
トップページは例外と思うかもしれませんが、それは着眼点がずれています。
実例で説明してみます。
トップページは指名検索で1位ならそれで良い
サイト名を検索語句として使用することを「指名検索」といいます。
このサイトなら「テクノロジー観測所」を検索語句とした場合のことです。
現在このサイトでは「Android」「Windows」「WordPress」「ウェブ技術」の4つのジャンルを扱っていますが、このどれで検索しても1ページ目に「テクノロジー観測所」は出てきません。
もちろんドメインが若いとか記事の力が足りないとか数が足りないとか、要因はいっぱいあります。ですがサイト管理人として理由を1つ明示するなら「狙ってないから」です。
「Windows」で検索した人に「テクノロジー観測所」を表示しても「なんだこりゃ?」と思うだけでしょう。サイト名とWindowsに関連性がありませんし。
それよりも、「Windows スリープ してないのに」など、具体性のあるキーワードで検索した時にこちらが表示されたほうが、読んでもらえる可能性も満足度も高まるはずです。
もちろん組み合わせる単語数が増えた「Windows スリープ してないのに」のほうが、先の「Windows」よりも使用される頻度は少なくなります。なお、この使用頻度のことを検索ボリュームといいます。
ボリュームの大きなキーワードは得てして抽象的な内容です。なぜなら組み合わせ数が少ないから。「Windows スリープ」だけで検索した場合、
- Windows7のスリープについて
- Windows10のスリープについて
- Windows環境における「スリープ」という機能について
- Windows環境でスリープを使用していて発生したトラブルについて
など、様々な情報がヒットするはずです。OSバージョンの指定もなければデスクトップかラップトップかタブレットかスマートフォンかもわかりませんし、スリープにしたいのか解除したいのか、あるいは出来ないのかも曖昧です。
そのような抽象的なキーワードを狙ってページを作ると、1枚のページの中に全ての情報を詰め込むことになります。
それでは都合が悪いことにはお気づきでしょうか?仮に全ての情報を盛り込んだトップページを作ったとします。
そのトップページは多くの人の目に留めることに心血を注ぎ、結果的に様々なキーワードで検索した時に出てくるようになったとします。
その場合、おそらくページの直帰率がとても高くなるでしょう。なぜならそのページには目的の情報が不足しているからです。
様々なキーワードに引っかかるように、広い情報を1枚のページ(トップページ)に詰め込んでしまうと、情報が埋もれてしまってピンポイントで見つけることが難しくなります。
キーワードを使ったコンテンツ制作の基本は「決め打ち」
先程の動物の話に戻ります。
猫、犬、鼠、馬、兎、蛇、猿、羊、亀、虫、鳥など、様々な動物に関する情報を全部盛り込んだトップページを作ったとします。こうすればどの動物のキーワードで検索しても同じページがヒットするため、アクセス数が一気に増えることでしょう。
しかし、全ての動物に関して詳細な情報を盛り込むとページが長くなり、読み込みに時間がかかってしまいます。ファーストビューの解説でも述べたように、快適なページ閲覧のために我慢できる待ち時間はだいたい3秒です。
読み込み時間だけでなく、ページが長いと「その中から目的の情報を探す」作業が発生します。たとえば「羊」で検索して辿り着いた人にとって「羊」以外の全てのセクションは不要です。
アクセスしたページ内に不要な要素があると大きなストレスとなります。だって、そのストレスをなくすために「羊」というピンポイントなキーワードで検索を行ったんですから。
またそのような構成のページでは、もしも虫嫌いな人が目当ての「羊」よりも先に「虫」の情報を見つけてしまったら嫌悪感すら抱くかもしれません。
この例えが唯一の正解というわけではもちろんありませんが、検索した人の意図を想像すると1枚のページで幅広くキーワードを網羅した結果利便性が下がっていることがわかる場合があります。これでは本末転倒、とても「有益」という評価はつけられません。
それぞれのテーマ(キーワード)ごとに専用のページを作ることで、「羊」と検索した人が「羊のページ」にたどり着ければ、探すまでもなく最初から最後まで読んでもらえるでしょう。
この時に管理者が想定しておく「検索意図」は具体的であればあるほど有効です。たとえば「羊の毛の刈り方」のページと「羊の餌の与え方」のページと「羊1匹の値段」のページを個別に作成しておくとか。
更に突っ込んで「羊の毛刈りに必要な道具」のページを作っておけば、その道具を買いたいと思っている人がやってくる可能性は確実に高まるでしょう。そこに広告を貼っておけば……あとはわかりますよね?
全体の閲覧数もカバーしたければ記事数(と、扱うテーマ)を増やせばいいんです。
このように、トップページの下にぶらさがったカテゴリ(ジャンル)、更にその下にぶらさがった記事ページ1つ1つを大切にし、トップページではなく記事ページに直接ランディングするように仕向けることを念頭に置くようにしましょう。
なお「ランディング」とは「流入」を意味する言葉で、検索エンジンなど外部から自分のサイトに訪れる「最初の入口」となる(=最初にアクセスした)場所のことです。
ではSEOにおいてトップページは全く意味のない存在なのか?もちろん違いますよね。
トップページの役割は文字通りの「入口」
超・大雑把ですが結論からいきましょう。
トップページには下層の全てのページに遷移できるリンクが置かれている必要があります。
どんなに巨大なホテルや高層マンションでも、玄関は全ての個室に繋がっていなければいけませんよね。それと同じ理屈です。
だいたいのサイトはこのような構造になっているはずです。様々な目的から、特に見てもらわなくても良いページを省いているケースも多いですがそこは別にこの記事の意図に関係ないので触れません。
冒頭で述べた「多くの人が勘違いしていると感じる」根拠がここで、トップページのつくりを見ればその管理人(あるいは企業の管理部門)のSEOに対する理解がある程度推測できます。
良い例 | ダメな例 |
---|---|
カテゴリ別アーカイブや主要ページへのリンクがきちんと整理されて並んでいる | おそらくキーワードを盛り込む目的だろう無駄な文章(企業理念や紹介等)が目立つ位置に記載されている |
もちろん例外はあります。そのサイトで紹介したい商品が1種類で、トップページをランディングページとしても使っているケース等です。
これはトップページの持つ役割を完全に勘違いしている例です。どう間違えているか?
良い例 | ダメな例 |
---|---|
いつ来ても大丈夫な構造になっている | 完全にご新規の一見さんに狙いを定めている |
トップページにキーワードを配置し、SEOでトップページへの流入を狙おうとしている場合、流入してくるのはほとんどが新規ユーザーになるでしょう。
アクセスはあるんだから悪いことではない、確かにそうなんですが、ここでも訪れた人の意図を考えるとこれが非合理的であることは容易に推測できます。
新規に流入してきた人は、当たり前ながらそのサイトに何があるのか(どこにあるのか)を一切知りません。このためトップページをウロウロと彷徨い歩くのが最初の行動になるでしょう。
その結果目当てのものが見つかればページ遷移してくれますが、その前に飽きちゃったり、画面の前で誰かに呼ばれたり、スクロールしすぎて目当てのものを見つけられなかったり、あるいは急にWi-Fiが途切れちゃったりするかもしれません。
もう一度繰り返しますがファーストビューの解説でも述べたように、快適なページ閲覧のために我慢できる待ち時間はだいたい3秒です。とかく集中力が途切れがちなスマホの利用シーンを甘く考えてはいけません。
目的のモノが置かれた場所を表示するのに「トップページから更に進む」、画面遷移が発生するような経路など論外といって差し支えないでしょう。今述べた「その結果目当てのものが見つかればページ遷移してくれますが」の部分はレアケースとして捉えておいたほうが良いと思います。
気を落ち着けてもう一度ご自身のサイトをチェックしてみてください。主要ページへのリンクをヘッダー(またはナビゲーション)・フッター・サイドメニューにのみ記載していませんか?
サイト内で最も視線を集めるBODY部(メインカラム)に肝心の情報を置いていない場合、せっかく作った良質なコンテンツを発見してもらえない可能性がグッと高まります。
特にレスポンシブデザインを採用したサイトでは、モバイルユーザーエージェントで表示した時にヘッダー・フッター・サイドメニューは隅に追いやられることが多いため非常に危険です。
このような状態のサイトの場合、サイト自体への流入数はどんどん上がっても2ページ目以降への遷移をしない「直帰ユーザー」が大量に発生してしまい、いつまで経っても流入数以外の指標が横ばいになると思います。結果検索エンジンは「流入は多いけど有益とはいえない」と判断し、なかなか順位を上げてくれないことでしょう。
先程の動物の例でいくと、猫、犬、鼠、馬、兎、蛇、猿、羊、亀、虫、鳥、それぞれのページへのリンクさえ入っていれば、それ以上の情報をトップページに記載する必要はないということです。
じゃTOPページには一切キーワードを入れないほうが良いのか?
これも極端な喩えですが、僕個人としてはどうせキーワードを入れるなら本文ではなくサイトタイトルまたはH1タグにぶち込むべきと思います。
たとえば、Androidの白ロムの通販を手がける「Tom商店」があったとします。
ウェブサイトを作る時、サイトタイトルを「Tom商店」とするよりも「Androidの白ロム専門店 Tom商店」としたほうがアクセスが集めやすくなることに説明はいらないはずです。
使用した検索ワードの中に「Android」「白ロム」というビッグワードが2つも入っていますからね。
もちろん店舗名「Tom商店」も入っているので指名検索にも対応できます。
こうすればメインカラムにメーカー別やOSバージョン別で商品ラインナップを置くこともできますし、「配送方法」「決済手段」「返品規則」「検査方法」といった各種案内(主要ページ)へのリンクを置く隙間もできるはずです。
これらはウェブサイトを訪れた多くの人に見てほしい情報のため、目立たせる必要があります。それだけでなく、初めてランディングしたのが商品ページだった人が配送方法を知りたくてトップページにアクセスしてきた場合などにも対応できるようになります。
この時、目立つ位置に企業理念が置いてあったらどう思いますか?「んなこたどうでもいいんだよ配送方法はどこに書いてあんだよ」と思いませんか?(笑)
以上をまとめると、
サイトへの流入者は何かしらの「目的」を持っていると考えることが大切
上記、抽象的なキーワードでSEO対策することの弊害がこれです。
目的が曖昧な人はランディングはしてもコンバージョンはしません。よく使われる例え話になりますが、その点を鑑みるとECサイトを安易にショッピングモールとイメージすることは危険であると思います。
Amazonだって楽天市場だってYahoo!ショッピングだって、検索結果から直接商品ページに飛ぶことのほうが多くないですか?ネット上のお店(ECサイト)は客が入り口ではなく商品棚の上空からダイレクトに降ってくるのが普通です。
またネット店舗にはリアル店舗のような「敷地」の概念がないため、ユーザーは店内のどこにいても一瞬で退出できます。こうした違いがどこに影響するか、顕著なのが「入口」つまりトップページというわけです。
リアル店舗であれば特に目的がなくてもお店を訪れる人は歓迎されます。ウィンドウショッピングというやつですね。
ところがネットショップでは、(リアル店舗と同じように歓迎はされますが)目的がない人のためにあれもこれも見せてあげる余裕がありません。様々な外的要因により一瞬でも気持ちが変わると即座に退出できる顧客には「順路」を提供することが難しいためです。仮に「この順で辿ってほしい」と思ってサイトを設計しても、その通りに行動してくれるユーザーはほんの一握りとなるでしょう。
そこで大手などは関連性の高い商品を大量に配置したりレビューコーナーを作って購入者に書かせたりと涙ぐましい努力を続けているわけですが、商品ラインナップでもウェブ集客コスト面でも圧倒的に劣る個人商店や中小企業のコーポレートサイトでこれを真似ることなど不可能です。
ではどうしたら「具体的な目的を持った人」に検索エンジンを通じてアプローチできるのか?
その答えがロングテールSEOです。
ロングテールキーワードを意識したSEO活動
「Windows スリープ してないのに」や「猫 ごはん かわいい 鳴き声」のように複数の単語を組み合わせたものを「ロングテールキーワード」といいます。
ロングテールキーワードはボリュームが小さいため軽視されがちですが、具体的な意図を持っているためアプローチがしやすく、流入者とサイト管理者の思惑が一致する(=マッチング)確率が大きく上がります(=逆にいえば、狙ったキーワードで流入してきた人の意図を予想しやすくなります)。
たとえば上記「猫 ごはん かわいい 鳴き声」というキーワードを使った人の意図は何でしょうか?
たいていの場合次の2つのうちどちらかになるはずです。
- かわいい猫を「見たい」
- 猫の鳴き声を「聞きたい」
その両方を満たすコンテンツとして「かわいい猫が鳴きながらごはんを食べている動画」を掲載しておけば満足度が高まると思いませんか?
これがロングテールSEOのロジックです。
両者の思惑が合致した結果として、ランディング後の行動に著しい変化が期待できます。それはたとえばコンバージョンレート等に数値として表れることになります。
簡単にいってしまえば、ロングテールSEOとは末端(記事ページや商品ページ自体)への指名検索を目指すようなものです。
その検索キーワードを使用した人が本当にほしいものをピンポイントで発信しておくことで、「来てほしい人」に来てもらえるサイトを設計することが大切です。
サイト全体の評価は末端のページ1つ1つの有益性で上下する
記事単体の評価が上がれば、ボリュームの大きな(=抽象的な)キーワードで検索した時に「もしかしてこれじゃありませんか?」といった具合に検索結果の上位に表示されるようになるかもしれません。
もしそうなれば、抽象的な内容の中でその話題をピンポイントで探している人の割合が高い可能性があるため、よりポジティブな理由でサイトを訪れてくれる人が増えることになります。
さらにいうと、こうした効果から様々なキーワードでトップページが出てくるサイトは信頼性が高い証ともいえるかと思います。
これらは検索エンジンの判断で自動的に行われるので、あえてキーワードを入れておく意味はありません。
ここまでの話を総合して、何が言いたいのかというとトップページを様々なキーワードで上位表示させる必要性は特に無い場合が多いということです。
末端のページさえしっかりと上位表示させておけば、トップページの順位を上げた時と同様にサイト自体への流入数は増えます。その際、末端のページにランディングする割合が高いほうが、ユーザー(利用者)と管理人(提供者)双方の「意図」が合致していることが多いため、最終的な目標(コンバージョンやシェアボタンのクリック獲得など)の達成率に大きな差が生まれるはずです。
こうした影響を総合的に見て「有益である」と判断されれば、サイト自体の順位もじわりじわりと上がっていってくれます。そして順位が上がれば流入者も増えることになります。この時、新たに増えた流入者もロングテールキーワード経由で「具体的な目的」を持っている場合、サイトの評価はさらにグングン上昇するでしょう。
こうして「ポジティブな連鎖」が発生するようになれば、放っておいてもサイトは安泰です。
オマケ:トップページの順位、「低い」んじゃなくて「上げてない」だけかもよ?
トップページの順位を上げる方法は他にもいくつか存在します。たとえばSearch Console(ウェブマスターツール)の設定をきちんとやるとか。
URLの正規化を行うとか。
構造化データでサイトリンクをマークアップしておくとか。
また、設定ミスによって正しく評価されていない場合も順位は上がりません。
Robots.txtに記述ミスがあってクローラが混乱しているとか。
サイトマップをクローラに提出してなかったとか。
また、実店舗をマイビジネスに登録することでロケーション履歴やアクティビティを連動させると、指名検索時にナレッジパネルと呼ばれる専用の表示領域が出現してより目立たせることができます。
ナレッジパネルについては下記Gogleのヘルプをご覧ください。なお、マイビジネスに登録したからといって必ずナレッジパネルが出現するものではないためご注意ください。
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- 検索結果の場合と同様に、ナレッジパネルにビジネス情報が表示されるかどうかはさまざまな要因に左右されます。関連性、距離、ビジネスの目立ち度などがすべてローカル検索結果の掲載順位の要因になります。ビジネスが確認されても、ナレッジパネルに表示されるとは限りません。
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